Share

第4話  

Author: リンフェイ
「お姉ちゃんもさっき言ったでしょ、あれは彼の結婚前の財産であって、私は一円も出していないのよ。不動産権利書に私の名前を加えるなんて無理な話よ。もう言わないでね」

 手続きをして、結城理仁が家の鍵を渡してくれたおかげで、彼女はすぐにでも引越しできるのだ。住む場所の問題が解決しただけでも有難い話だ。

 彼女は絶対に結城理仁に自分の名前を権利書に加えてほしいなんて言うつもりはなかった。彼がもし自分からそうすると言ってきたら、彼女はそれを断るつもりもなかった。夫婦である以上、一生覚悟を決めて過ごすのだから。

 佐々木唯月もああ言ったものの、妹が自分で努力するタイプでお金に貪欲な人ではないことをわかっていた。それでこの問題に関してはもう悩まなかった。一通り姉の尋問が終わった後、内海唯花はやっと姉の家から引っ越すことに成功した。

 姉は彼女をトキワ・ガーデンまで送ろうとしたが、ちょうど甥っ子の佐々木陽が目を覚まし泣いて母親を探した。

 「お姉ちゃん、早く陽ちゃんの面倒を見てやって。私の荷物はそんなに多くないから、一人でも大丈夫よ」

 佐々木唯月は子供にご飯を食べさせたら、昼ご飯の用意もしなくてはいけなかった。夫が昼休みに帰ってきて食事の用意ができていなかったら、彼女に家で何もしていない、食事の用意すらまともにできないと怒るのだ。

 だからこう言うしかなかった。「じゃあ、気をつけて行ってね。昼ご飯あなたの旦那さんも一緒に食べに来る?」

 「お姉ちゃん、昼は店に戻らなくちゃいけないから遠慮しとくね。夫は仕事が忙しいの、午後は出張に行くって言ってたし、もうちょっと経ってからまたお姉ちゃんに紹介するわね」

 内海唯花はそう嘘をついた。

 彼女は結城理仁のことを全く知らなかったが、結城おばあさんは彼が忙しいと言っていた。毎日朝早く出て夜遅くに帰ってくる。時には出張に行かなければならず、半月近く帰ってこないそうだ。彼女は彼がいつ時間があるかわからなかった。だから姉に約束したくてもできないのだ。適当に言って信用を裏切るようなことはしたくなかった。

 「今日結婚手続きをしたばかりなのに、出張に行くの?」

 佐々木唯月は妹の旦那が妹に優しくないのではと思った。

 「ただ手続きしただけ、結婚式もあげてないのよ。彼が出張に行くのは仕方ないことよ。なるだけお金を稼いだほうがいいじゃない?これから出費は増えるだろうし。お姉ちゃん、じゃあ私行くわね。早く陽ちゃんにご飯食べさせてあげて」

 佐々木唯花は姉と甥っ子に手を振って別れを告げ、スーツケーツを持って下に降りていった。

 トキワ・フラワーガーデンを入ったことはないが、彼女は知っていた。

 彼女はタクシーを呼び、直接トキワ・フラワーガーデンへと向かった。着いてから、結城理仁にどの棟の何階なのか聞いていないことに気がついた。

 急いで携帯を取り出し、結城理仁に電話をしようと思ったが、彼の電話番号を知らなかった。LINEを交換していたおかげで彼にLINE電話をすることができた。

 結城理仁は会議中で、会議室にいる人は皆携帯をマナーモードに設定していた。彼は会議中は誰もプライベートな電話をすることを許可していなかったのだ。

 もちろん彼自身もマナーモードに設定していた。しかし、携帯を机の上に置いていたので、内海唯花からの電話にすぐ気がついた。

 夫婦間でLINEを追加する時に結城理仁は彼女の名前を登録していなかったので、内海唯花のLINEのニックネームである『深海の美人魚』と表示されていた。彼は知らない人なので考えることもなく携帯を持ってそのまま唯花からの電話を切った。

 さらには内海唯花をLINEから削除してしまったのだ。

 内海唯花は彼のこの一連の行動を知らずに、電話を切られたのでメッセージを送ることにした。

 彼女はこう尋ねた。「結城さん、私は今トキワ・フラワーガーデンにいます。でも、部屋はどこか聞くのを忘れてしまいました」

 文字を打ち終わってメッセージを送ってから結城理仁とはLINE友達でないことに気がついた。

 彼女は携帯を見ながらぽかんとした。

 「どうして友達登録されていないの?役所の入口で確かにLINE交換したのに。もしかして私が追加操作を間違えた?」

 内海唯花は独り言を言って、追加操作を間違えたかどうか思い返した。

 確かに操作を間違えてはいなかった。今二人が友達登録されていないということは、一つしか理由はなかった。それは結城理仁が彼女をLINEから削除したということだ。

 彼はもしかしてさっき結婚したことを忘れたのか?

 正直に言えば、内海唯花がもし姉の家から引越ししなければ、二日もしたら自分には結城理仁という夫がいることを忘れてしまうだろう。

 内海唯花は結城おばあさんに電話をかけることにした。おばあさんが電話に出て彼女は言った。「おばあちゃん、私姉の家から出てきて、今トキワ・フラワーガーデンにいるんだけど、結城さんの、えっと、私と理仁さんの家がどこにあるのかわからないの。おばあちゃん、わかる?」

 結城おばあさん「......」

 「唯花ちゃん、ちょっと待ってね、今すぐ理仁くんに電話するから」

 おばあさんも知らなかった。

 結城理仁が内海唯花をよく観察するために、新しく買った家と車だ。彼女もこの二人が結婚手続きを終えてから、孫がトキワ・フラワーガーデンに家を買ったことを知ったのだ。

 結城おばあさんはそう言い終わると電話を一旦切り、結城理仁に電話をかけた。

 結城理仁は新妻のLINEを削除するという奇行の後、携帯をまた机の上に置き、会議を続けた。その結果三分もしないうちに携帯の画面が光った。祖母からの電話には彼はおとなしく出るしかなかった。

 「俺は今会議中なんだ」

 結城理仁は低い声で言った。「何か用があるなら、帰ってから話してくれよ」

 「理仁くん、あなたが新しく買ったトキワ・フラワーガーデンは何棟の何階の何号室なの?唯花ちゃんが引っ越してきたのよ。でも部屋がどこなのかわからないじゃない。彼女のLINEがあるんでしょ?早く教えてあげなさい」

 結城理仁は眉をピクっと動かした。ああ、彼は思い出したらしい。

 彼は今日結婚し、おばあさんは好いているが自分は初めて会った女性が妻になったのだ。確か内海唯花という名前だったはずだ。しかし彼はさっきその妻のLINEを消したばかりだ。

 「ばあちゃん、彼女に伝えてくれ。B棟の8階、808号室だ」

 「いいわ、おばあちゃんが彼女に伝えておくから、仕事を続けて」

 おばあさんはそそっかしい人で、相手から問題の答えを聞くとすぐに電話を切り、またすぐ内海唯花に結果報告をした。

 結城理仁は携帯を見て沈黙した後、再び内海唯花にLINE友達登録の申請を送った。

 内海唯花は彼が自分を削除したことは気に留めず、彼の申請を許可した。

 「すまなかった。さっき君が誰なのか忘れていたんだ」

 結城理仁はメッセージを送り彼女に謝った。

 内海唯花は結城おばあさんを助けたことがある。その時、内海唯花にお礼を言いに来たのは結城おばあさんの息子とその奥さん達だった。孫たちが病院にお見舞いに来た時、内海唯花はそこにいなかった。それで、結城理仁のような忙しい人間にとっては内海唯花がいかなる人か覚えられないのだ。

 たとえおばあさんがいつも彼の前で内海唯花の名前を口にしたとしても、彼は聞き流すだけで心にも留めないのだ。だから内海唯花の名前など覚えていなかった。

 内海唯花は彼に返事した。「大丈夫です。忙しいでしょうから。私は荷物を上に運びます」

 「手伝いが必要か?」

 「スーツケース一つだけですから、自分で持って上がれますよ。それに本当に助けが必要だとして、あなたは手伝いに来られないでしょう?」

 結城理仁は正直に答えた。「無理だ!」

 彼は忙しすぎるのだ。

 どこに帰って彼女の引っ越しを手伝う時間があるだろうか。

 内海唯花は泣き笑いの絵文字を送って、その後は彼の仕事を邪魔しないように静かにした。

 結城理仁もそれからメッセージを送ることはなかった。二人はお互いよく知らなかったし、特に話すこともなかった。

 結城理仁はただこの妻が言うことを聞き、些細なことで彼に迷惑をかけないことだけを望んでいた。彼にはそれに対処するような時間はなかった。

 また携帯を机の上に戻し、結城理仁は顔を上げた。そして彼は気づいた。そこにいる全員の眼差しが自分に注がれていることに。
Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第964話

    辰巳は奏汰は身長が一メートル九十あるのを思い出し、おばあさんがどうして玲を選んだのかわかった気がした。彼自身は一メートル八十には満たない。一メートル七十六センチだ。もし、辰巳と玲が一緒になれば、玲のほうが彼よりも背が高くなってしまう。彼ら九人の中で、奏汰の身長が一番高いのだ。「女性が男装をしたってすぐにバレちゃうでしょ。女性の喉ぼとけはそんなにはっきりとしていないし」唯花は玲の写真を見つめ、この女性に興味を持った。どうして二十年以上も男のふりをしているのだろうか?「唯花さん、喉ぼとけくらいどうにでもなるさ」唯花「……」そうだったのか。唯花の知らないことはまだまだたくさんあるらしい。「で、さっき出てきた堺真世さんって一体誰なの?」唯花はまた興味津々で尋ねた。理仁は説明し始めた。「A市にある堺グループの社長だ。彼女の生い立ちは少し可哀想なんだ。妹以外に、他の家族はみんな亡くなっている。だから、仕方なく彼女が家業を継いだんだよ。ここまで来るのにも相当苦労の多い人生だったはずだ。彼女は常に中性的な格好をしているし、言っちゃ悪いが、そのうえ、まな板だから、男に見えてしまうのさ。今はもうこの姉妹は結婚している。だから堺真世さんも女性っぽくなったんだよ。あ、彼女が結婚した相手はA市の雨宮遥さんのお兄さんなんだ。雨宮遥さんの夫は、A市一の富豪家である桐生蒼真で善君の実のお兄さんなんだけど、善君とは唯花さんも会ったことがあるよね。彼は桐生家の五男坊だ。彼らの家の事情はまた今度時間がある時に詳しく話すよ。もうそれだけで一つのドラマができそうなくらいだから。俺たち結城グループとアバンダントグループ、アバンダントは桐生家が経営している会社だ。結城家と桐生家は深いビジネス上の付き合いがあるから、日を改めて時間がある時に唯花さんをA市に連れて行って、彼らに紹介するね」この二つのグループはそれぞれ別の都市に存在している。しかし、彼らはビジネスにおいてかなり深い繋がりがあるのだ。理仁は以前、唯花との関係を桐生蒼真に相談したこともある。アドバイスをもらったとおりに行動した結果は彼の想像したものよりも良いものだとは言い切れないが、理仁に現状を打開させる勇気を与えたことには変わりない。暫く嵐に耐え続け、彼は今雨上がりの虹がもう見えている。それでこの

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第963話

    今、理仁がその写真を見たいと思ったのは、ここに唯花がいるからだった。何か面白いことがあれば、愛妻に聞かせたり見せたりしたいのだ。辰巳だって馬鹿ではない。理仁が辰巳と奏汰の事をある種のゴシップとして妻に教えてやろうと思っているのはわかっている。妻を楽しませるためであれば、理仁は自分の兄弟、従弟たちですらも売ってしまうのだ。辰巳はその二枚の写真を渡した。心の中では自分は本当に気骨のない男だとしょげていた。理仁が辰巳の情報を妻に売って楽しませようとしているのがわかっていながら、大人しくへこへこと命令に従うのであった。もし、辰巳も将来恋に悩みを抱えることになって、理仁と唯花の助けが必要になったとしたら、この夫婦が無条件に助けてくれるのを期待していた。いやいや、そんなことを考えるのは早すぎるだろう。彼の恋路は順風満帆に間違いないのだ。どうせ彼はスピード結婚でもないし、こそこそと裏で結婚するわけでもない。自分の正体を隠したり、相手を騙したりするわけじゃないし、順調に進むに決まっているじゃないか。「何の写真なの?」唯花はやはりそれに興味を示した。理仁はまるで唯花に対する献上物であるかのようにその写真を彼女に捧げた。そして「ばあちゃんだよ。ばあちゃんが孫たちの人生におけるビッグイベントに熱心になっているんだ。少し前、ばあちゃんがあちこち走り回ってただろう。あれは辰巳と奏汰に相応しい奥さん候補を探しに行ってたんだよ」と説明した。結城奏汰は結城家の若者世代の中で三番目の坊ちゃんである。彼は結城家の三男坊の長男で、結城グループ傘下の全てのホテル業を担っている。非常に口がうまく、おしゃべり上手な男だが、実は腹黒い。唯花は結城家の理仁たち若者世代への印象はとても深かった。誰もがイケメンだ。唯花はその写真を受け取って言った。「おばあちゃんも他にやる事がなくて暇だから、あなた達の結婚にやきもきしてるんでしょう。あなた達のような家柄出身であれば、その気になれば、たくさんの女の子が列をなして結婚したいと詰めかけてくることでしょう」しかし、彼らのように非常に優秀な男性は、確かに自分の結婚に焦りを覚えていなかった。去年、唯花と理仁がスピード結婚した時、彼は三十歳だった。辰巳は理仁より一歳年下で、今年もうすぐ三十歳になる。この年齢であれば、他

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第962話

    「唯花さん、なんで事前に教えてくれなかったんだ、知っていたら下まで迎えに行ったのに」理仁は妻から弁当を受け取った。唯花が弁当を持ったままだと疲れるだろうと思い、それを受け取ってからデスクの上に置き、彼女の手を繋いでソファに座らせた。彼の熱い視線が唯花に注がれていた。辰巳は思った。もし人の目玉を自在に取り出すことができる仕様であれば、理仁は自分の目を妻にくっつけて四六時中彼女のことを見つめているだろうと。「別にここには初めて来たわけじゃないし、出迎えに来てもらう必要なんてないわよ。お昼ご飯を持ってきたから、まだ温かいうちに食べて。毎日決まった時間に食事すれば胃の調子も良くなるはずよ」理仁はニコニコと笑った。「唯花、ありがとう」唯花は堪らずニヤニヤしている彼の頬をつねって、自分も笑った。「今日もしかして会社からボーナスでも支給される日なんじゃないの。車から降りて会う人会う人がみんなニコニコ笑っていたわよ。心から思わず出ている微笑みって感じで」辰巳は笑顔で横から口を挟んだ。「唯花姉さん、あなたが来てくれただけで、みんなボーナスを支給されるよりも嬉しいんですよ」理仁は辰巳のほうへ目を向けた。妻が自分のために弁当を持ってきたのが目に入っていないのか?辰巳の唐変木がぼけーっとまだここに突っ立っていて、何をやってんだ、さっさと失せろ!「辰巳君、そのお弁当箱持って来て、たくさん作って持って来たから二人で一緒に食べても十分足りるはずよ」それを聞いた辰巳はデスクの上から弁当箱を取って来て、ロ―テーブルの上に置いた。自分もそれの前に腰かけ、弁当箱を開けようと手を伸ばしたその瞬間、理仁からものすごい剣幕で睨みつけられているのに気がついた。その瞬間、辰巳はピタリと動きを止めた。さっきまでの笑顔が消え、理仁は黒々とした瞳でギロリと辰巳を睨みつけていた。その視線だけで辰巳にハチの巣のように穴を開けてしまいそうな勢いだ。いや、辰巳はこの時すでに、理仁から睨まれてハチの巣になっていた。「兄さん、お、俺、代わりに蓋を開けてあげようと思ってさ。唯花姉さんがどんなご馳走を作ってきたのか一目くらい見たっていいだろ」まだ理仁から睨まれていたが、辰巳は何も知らない顔をして弁当箱の蓋を開けた。そして上段に盛られた料理を見て、心の中で唯花の料理の腕を賞

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第961話

    「奥様」「奥様」受付にいる二人が唯花が入ってくるのを見て、微笑みながら律儀に挨拶をした。唯花は受付たちに微笑み返した。この二人は前から彼女に態度が良かった。そのうち一人が受付のデスクから出てきて、唯花をエレベーター前まで案内した。その時、唯花が弁当箱らしきものを持っているのをちらりと見た。「夫が、最近胃の調子が悪いらしいので、作って持ってきたんです。もうすぐ昼休憩に入りますよね?」唯花は昼になる少し前に到着したのだ。受付嬢は心配そうな顔をして言った。「結城社長は胃の調子を崩されていたのですか?でしたら、きちんと休まないと」彼女は心の中で、社長は最近仕事をする以外、他のことをしていないと思った。あまりに忙しく仕事に熱中しているので、時間通りに食事もしていない。多くの場合、秘書の木村が外で何か買って来ていた。しかし、木村が言うには、社長は忙しさのあまり、食事をすることすら忘れていたらしい。こんなに自分を追いつめて、胃が悪くならないほうがおかしいだろう?「もうすぐ昼休憩に入りますよ」受付嬢はそう付け加えた。彼女は唯花を社長専用エレベーターの前まで案内し、エレベーターのボタンを押して丁寧な動作で中へ入るよう合図を送った。唯花は二つの弁当箱を下げてエレベーターに乗り込み、受付嬢に微笑みかけると、一人で最上階へと上がって行った。最上階に到着し扉が開くと、木村秘書が笑顔で出迎えてくれた。唯花はそれに少し驚き、木村を何度も確認した。心の中でこの男はどうしてこんなにニカッと歯を出して笑うほど嬉しそうに見えるのだろうと思っていた。「奥様、こんにちは。私は結城社長の秘書をやっております、木村と申します」「木村さん、こんにちは」唯花は丁寧に挨拶を返した。「社長は今時間があります?私中に入って邪魔にならないでしょうか?」木村はニコニコと笑って言った。「そんなことございません。奥様、ノックして中へお入りください」彼はわざと社長に夫人が来たことを伝えず、サプライズにしようと思っていた。「ですが、副社長も中にいらっしゃいますよ」木村はそうひとこと付け加えた。辰巳は理仁のところに行っておばあさんから「早く結婚しろ」と催促されるのを愚痴りに来ていた。おばあさんは彼にお見合い写真を持って来ていて、女性側の容姿、年齢、今ど

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第960話

    「今のところ、ただあなたと奏汰の相手を見といただけよ、だからもうこれ以上ないわ。他の子たちはまだ急がなくてもいいから」辰巳は他の従弟たちも巻き込もうとした。「まだ未成年の蓮を除いて、他の人全員二十歳以上になったじゃん、みんなもう法律上結婚できるよ。ばあちゃん、不公平はいけないぞ。みんながお嫁さんをもらったら、可愛いひ孫の女の子に会える確率が上がるじゃん?」おばあさんは言った。「唯花さんに絶対女の子を産んでもらうわ。あの占い師は言ったの。唯花さんの一番目の子は絶対娘だってね」辰巳は「ばあちゃん、いつからこんなに占いなんて信じるようになったんだ?」と言った。「理仁が本当に唯花さんを愛し始めてからよ。古代から伝わってきた占い術に精通する人の話なら、信じてもいいじゃない」おばあさんは言い終わると、立ち上がった。「仕事の邪魔はしないわ。おばあちゃんは唯花さんの店に行ってくる。久しく陽ちゃんに会ってないから、恋しくなったわ。唯月さんの弁当屋もそろそろ開店するでしょう?」辰巳は言った。「義姉さんから聞いていないけど」「理仁と唯花さんは長い間喧嘩していたんだから、聞いていないほうがいいわ」辰巳は最初はそれがどういう意味か理解できなかった。おばあさんが行った後、じっくり考えてからようやくその意味を理解した。理仁は独占欲の強い男だ。理仁が知らないことを辰巳が先に知っていたら、絶対蜂の巣になるほど、理仁に鋭い視線で睨まれるに違いない。理仁は女性にすら嫉妬するから、彼らに対してはなおさらだ。おばあさんが行って間もなく、唯花が来た。彼女は理仁に昼食を早めに持ってきた。忙しいからといって、また食事し忘れないように。唯花の車が結城グループの前に止まると、警備員は彼女だと気づき、大喜びだった。すぐに会社のゲートを開け、唯花を中に招き入れた。そして急いで内線で受付に知らせた。警備員はニコニコしながら言った。「社長夫人がいらっしゃいました」最近、社長は狂うほど仕事をこなしていたから、社内全員も一緒に残業しなければならなかった。その原因は社長夫人だった。今日、社長夫人が突然訪ねて来た。つまり、この苦しい日々もようやく終わりを迎えることを意味する。警備員たちはまだ社長に苦しめられていなかったが、社員たちがどれほど社長夫人の到来を待

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第959話

    辰巳は意外そうに写真に写ったイケメンを指しながら尋ねた。「この人、女性なのか?」「彼女と弟は双子で、二人はそっくりなのよ。ご家族は幼い頃から彼女を男の子として育てて、男らしい性格になったから、知らない人はみんな彼女が長男だと思ってるわ」「ばあちゃんはどうして彼女が女性だとわかったんだよ」さっきおばあさんが話題に出した堺真世のことなら、辰巳は聞いたことがあり、写真も見たことがあった。確かに一見すると男性のように見えるが、別にわざと男装しているわけではなく、ただ中性的なスタイルでいて、胸もそこまでないから、男性と間違われてしまうのだ。しかし、今辰巳が見ている写真に写っているイケメンは真世と違った。彼女は男の子として育てられ、意図的に男装していた。顔のパーツがはっきりしていて、冷たい印象の顔をしている。背が高くスーツ姿で、誰が彼女を見ても、男性だと思うだろう。辰巳が写真を裏返すと、そこに基本情報を書いてあった。白山玲(しらやま れい)、二十八歳、柏浜市白山グループの取締役社長の「長男」で、今は白山グループの社長である。父親に信頼されて、無口で行動力が高く、バスケットボールと乗馬が趣味だ。「ばあちゃん、情報はこれだけ?」「そうよ、十分でしょう?名前と年齢、それとどこに住んでいるかわかればいいでしょう?もっと知りたければ、自分で調べなさい」おばあさんはそう言いながら彼の手から写真を取り戻した。「それに、これはあなたに紹介する人じゃないわよ。奏汰のために用意したの。玲さんは無口で行動派だから、あなたに似合わないよ。奏汰にピッタリよ。それに、奏汰はおしゃべりで口が達者だから、玲さんと一緒にいられるなら、夫婦生活は退屈しないでしょう」辰巳「……ばあちゃん、俺も結構おしゃべりだと思うぞ」「奏汰には勝てないでしょ?」辰巳は言葉に詰まった。確かに、従兄弟、兄弟の中で一番話が上手なのは奏汰なのだ。「玲さんに興味がある?」奏汰は首を振った。「いや、そうじゃない。これが奏汰に紹介する人なら、もう一人は誰なんだ」彼はもう一枚の写真を真面目に確認した。写真に写っていたのは女性だった。サングラスをかけており、目元と顔の大部分が見えなかった。もともと顔が小さいからか、サングラスを付けると、ますます小さく見える。それでも顔の整った女

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status