Share

第4話  

Author: リンフェイ
「お姉ちゃんもさっき言ったでしょ、あれは彼の結婚前の財産であって、私は一円も出していないのよ。不動産権利書に私の名前を加えるなんて無理な話よ。もう言わないでね」

 手続きをして、結城理仁が家の鍵を渡してくれたおかげで、彼女はすぐにでも引越しできるのだ。住む場所の問題が解決しただけでも有難い話だ。

 彼女は絶対に結城理仁に自分の名前を権利書に加えてほしいなんて言うつもりはなかった。彼がもし自分からそうすると言ってきたら、彼女はそれを断るつもりもなかった。夫婦である以上、一生覚悟を決めて過ごすのだから。

 佐々木唯月もああ言ったものの、妹が自分で努力するタイプでお金に貪欲な人ではないことをわかっていた。それでこの問題に関してはもう悩まなかった。一通り姉の尋問が終わった後、内海唯花はやっと姉の家から引っ越すことに成功した。

 姉は彼女をトキワ・ガーデンまで送ろうとしたが、ちょうど甥っ子の佐々木陽が目を覚まし泣いて母親を探した。

 「お姉ちゃん、早く陽ちゃんの面倒を見てやって。私の荷物はそんなに多くないから、一人でも大丈夫よ」

 佐々木唯月は子供にご飯を食べさせたら、昼ご飯の用意もしなくてはいけなかった。夫が昼休みに帰ってきて食事の用意ができていなかったら、彼女に家で何もしていない、食事の用意すらまともにできないと怒るのだ。

 だからこう言うしかなかった。「じゃあ、気をつけて行ってね。昼ご飯あなたの旦那さんも一緒に食べに来る?」

 「お姉ちゃん、昼は店に戻らなくちゃいけないから遠慮しとくね。夫は仕事が忙しいの、午後は出張に行くって言ってたし、もうちょっと経ってからまたお姉ちゃんに紹介するわね」

 内海唯花はそう嘘をついた。

 彼女は結城理仁のことを全く知らなかったが、結城おばあさんは彼が忙しいと言っていた。毎日朝早く出て夜遅くに帰ってくる。時には出張に行かなければならず、半月近く帰ってこないそうだ。彼女は彼がいつ時間があるかわからなかった。だから姉に約束したくてもできないのだ。適当に言って信用を裏切るようなことはしたくなかった。

 「今日結婚手続きをしたばかりなのに、出張に行くの?」

 佐々木唯月は妹の旦那が妹に優しくないのではと思った。

 「ただ手続きしただけ、結婚式もあげてないのよ。彼が出張に行くのは仕方ないことよ。なるだけお金を稼いだほうがいいじゃない?これから出費は増えるだろうし。お姉ちゃん、じゃあ私行くわね。早く陽ちゃんにご飯食べさせてあげて」

 佐々木唯花は姉と甥っ子に手を振って別れを告げ、スーツケーツを持って下に降りていった。

 トキワ・フラワーガーデンを入ったことはないが、彼女は知っていた。

 彼女はタクシーを呼び、直接トキワ・フラワーガーデンへと向かった。着いてから、結城理仁にどの棟の何階なのか聞いていないことに気がついた。

 急いで携帯を取り出し、結城理仁に電話をしようと思ったが、彼の電話番号を知らなかった。LINEを交換していたおかげで彼にLINE電話をすることができた。

 結城理仁は会議中で、会議室にいる人は皆携帯をマナーモードに設定していた。彼は会議中は誰もプライベートな電話をすることを許可していなかったのだ。

 もちろん彼自身もマナーモードに設定していた。しかし、携帯を机の上に置いていたので、内海唯花からの電話にすぐ気がついた。

 夫婦間でLINEを追加する時に結城理仁は彼女の名前を登録していなかったので、内海唯花のLINEのニックネームである『深海の美人魚』と表示されていた。彼は知らない人なので考えることもなく携帯を持ってそのまま唯花からの電話を切った。

 さらには内海唯花をLINEから削除してしまったのだ。

 内海唯花は彼のこの一連の行動を知らずに、電話を切られたのでメッセージを送ることにした。

 彼女はこう尋ねた。「結城さん、私は今トキワ・フラワーガーデンにいます。でも、部屋はどこか聞くのを忘れてしまいました」

 文字を打ち終わってメッセージを送ってから結城理仁とはLINE友達でないことに気がついた。

 彼女は携帯を見ながらぽかんとした。

 「どうして友達登録されていないの?役所の入口で確かにLINE交換したのに。もしかして私が追加操作を間違えた?」

 内海唯花は独り言を言って、追加操作を間違えたかどうか思い返した。

 確かに操作を間違えてはいなかった。今二人が友達登録されていないということは、一つしか理由はなかった。それは結城理仁が彼女をLINEから削除したということだ。

 彼はもしかしてさっき結婚したことを忘れたのか?

 正直に言えば、内海唯花がもし姉の家から引越ししなければ、二日もしたら自分には結城理仁という夫がいることを忘れてしまうだろう。

 内海唯花は結城おばあさんに電話をかけることにした。おばあさんが電話に出て彼女は言った。「おばあちゃん、私姉の家から出てきて、今トキワ・フラワーガーデンにいるんだけど、結城さんの、えっと、私と理仁さんの家がどこにあるのかわからないの。おばあちゃん、わかる?」

 結城おばあさん「......」

 「唯花ちゃん、ちょっと待ってね、今すぐ理仁くんに電話するから」

 おばあさんも知らなかった。

 結城理仁が内海唯花をよく観察するために、新しく買った家と車だ。彼女もこの二人が結婚手続きを終えてから、孫がトキワ・フラワーガーデンに家を買ったことを知ったのだ。

 結城おばあさんはそう言い終わると電話を一旦切り、結城理仁に電話をかけた。

 結城理仁は新妻のLINEを削除するという奇行の後、携帯をまた机の上に置き、会議を続けた。その結果三分もしないうちに携帯の画面が光った。祖母からの電話には彼はおとなしく出るしかなかった。

 「俺は今会議中なんだ」

 結城理仁は低い声で言った。「何か用があるなら、帰ってから話してくれよ」

 「理仁くん、あなたが新しく買ったトキワ・フラワーガーデンは何棟の何階の何号室なの?唯花ちゃんが引っ越してきたのよ。でも部屋がどこなのかわからないじゃない。彼女のLINEがあるんでしょ?早く教えてあげなさい」

 結城理仁は眉をピクっと動かした。ああ、彼は思い出したらしい。

 彼は今日結婚し、おばあさんは好いているが自分は初めて会った女性が妻になったのだ。確か内海唯花という名前だったはずだ。しかし彼はさっきその妻のLINEを消したばかりだ。

 「ばあちゃん、彼女に伝えてくれ。B棟の8階、808号室だ」

 「いいわ、おばあちゃんが彼女に伝えておくから、仕事を続けて」

 おばあさんはそそっかしい人で、相手から問題の答えを聞くとすぐに電話を切り、またすぐ内海唯花に結果報告をした。

 結城理仁は携帯を見て沈黙した後、再び内海唯花にLINE友達登録の申請を送った。

 内海唯花は彼が自分を削除したことは気に留めず、彼の申請を許可した。

 「すまなかった。さっき君が誰なのか忘れていたんだ」

 結城理仁はメッセージを送り彼女に謝った。

 内海唯花は結城おばあさんを助けたことがある。その時、内海唯花にお礼を言いに来たのは結城おばあさんの息子とその奥さん達だった。孫たちが病院にお見舞いに来た時、内海唯花はそこにいなかった。それで、結城理仁のような忙しい人間にとっては内海唯花がいかなる人か覚えられないのだ。

 たとえおばあさんがいつも彼の前で内海唯花の名前を口にしたとしても、彼は聞き流すだけで心にも留めないのだ。だから内海唯花の名前など覚えていなかった。

 内海唯花は彼に返事した。「大丈夫です。忙しいでしょうから。私は荷物を上に運びます」

 「手伝いが必要か?」

 「スーツケース一つだけですから、自分で持って上がれますよ。それに本当に助けが必要だとして、あなたは手伝いに来られないでしょう?」

 結城理仁は正直に答えた。「無理だ!」

 彼は忙しすぎるのだ。

 どこに帰って彼女の引っ越しを手伝う時間があるだろうか。

 内海唯花は泣き笑いの絵文字を送って、その後は彼の仕事を邪魔しないように静かにした。

 結城理仁もそれからメッセージを送ることはなかった。二人はお互いよく知らなかったし、特に話すこともなかった。

 結城理仁はただこの妻が言うことを聞き、些細なことで彼に迷惑をかけないことだけを望んでいた。彼にはそれに対処するような時間はなかった。

 また携帯を机の上に戻し、結城理仁は顔を上げた。そして彼は気づいた。そこにいる全員の眼差しが自分に注がれていることに。
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Mga Comments (1)
goodnovel comment avatar
岡田由美子
ふはっ。いつもはあり得ないのねー なをか楽しみ
Tignan lahat ng Komento

Pinakabagong kabanata

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2128話

    玲は奏汰につきまとわれても、彼のやりたいようにしているのだから、つまり奏汰のことを嫌っているわけではないのだろう。執事は苦しんだ様子で言った。「旦那様に奥様、それから碧様のあの態度には見ているこっちがつらくなる。我ら玲様はあんなに優秀なお方だというのに、それなのに……玲様がもし女性であったら、それか結城社長のほうが女性だったのなら、あのお二人が一緒になるのには大賛成ですよ。祝福いたします。しかし、あの二人はどちらも男なのですよ!」玲の実の両親はこのような状況でも全く平気な様子だが、執事のほうは胸を締め付けられる思いだった。ボディーガードたちは黙っていた。彼らは心の中で、きっと玲は同性愛者で普段はそれを悟られないように過ごしているからみんな知らないだけなのだろうと考えていた。玲を恋い慕う女性は非常に多い。それなのに、誰一人として玲を落とすことはできていない。つまり、これこそ玲が女に興味はないという証拠なのではないか?女が好きじゃないというなら、つまり男のほうに興味があるということだろう?……凪は白山邸から戻ってきた後、母親と若葉の車が庭の駐車場に停まっているのを見て、二人が家にいることがわかった。凪は駐車して急いで家の中に入ることはなく、若葉の車の周りをぐるりと一周した。「お嬢様、お帰りなさいませ」この時、執事が出てきて、礼儀正しく挨拶をした。凪が若葉の車を回っているのを見て、執事は不思議に思い尋ねた。「お嬢様、若葉様の車を回って何をしてらっしゃるのですか?」凪は若葉の車のボンネットを叩いて言った。「若葉の車は私のよりずっと良いみたい」この執事はここで雇われてちょうど一年経つ。若葉の実の父親が当主の手で刑務所に入れられてから、新しく雇ってきた執事だ。まだ一年しか働いていないが、黛家では次女の若葉のほうが長女である凪より大事にされていることがわかっている。すでにそれぞれがあるべき立場に戻り、若葉のほうは後継者の候補から外され、凪のほうは自分のものを全て取り返したように見える。しかし、実際、若葉のほうが生活面では凪よりも贅沢な暮らしをしている。当主たちはよく若葉に贈り物をしているが、あまり凪に贈ることはなかった。凪の言葉を聞いて、執事は少し同情したようだった。しかし、あまり多くを話すことはできず、ただこのよう

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2127話

    少しだけ話すのをやめ、奏汰はまた声を低くして話し始めた。「玲さんもホテルには秘密の通路を持っていますが、俺にもあります。誰にもホテルに入ったことを気づかれませんから」玲が実は女性であるという事実を、いつか彼女が自分から世間に公表することを奏汰は望んでいる。それはつまり、彼女が彼のことを受け入れて、彼のために女性として生きることを決めたということだ。だから、奏汰はすでに玲が女性であると知っているが、他の人の前では依然としてその事実は隠し、誰にも彼女が女性であると疑われないようにしたいのだ。「泳ぎに行きたいなら、今から行きましょう」「ちょっと考えさせてください」玲がこれに心を動かさせていないわけではない。彼女もこんなに暑い日には泳いで涼を楽しみたいと思っていた。ただ水に入るなら今の男装を解かねばならず、プールで楽しんで出てくる時には、またかなりの時間をかけて男装しないといけないのでそれが面倒だった。普段、彼女は毎晩帰ってきて、外出する必要がない場合にやっと男という偽の殻を脱ぎ捨て、女性の姿に戻っている。自分の家の浴槽で思いっきりお風呂に入り、一日の疲れを癒やす。そして毎朝は早く起きて、誰の手も借りずにまた男の姿に戻る。絶対に少しもボロがないことを確認してから、外出している。このような毎日は、実際とても疲れる。しかし、彼女はこの生活に慣れてしまっている。「玲さんが誰にも気づかれないなら良いでしょう。そんなに考える必要はありません。それ以上悩んでいたら夜が更けて、ホテルで一緒に過ごすことになりますよ」玲は聞き返した。「まさか、あんたは今日うちに泊まっていくつもりなんですか?」「茂さんが明日の朝一に一緒に散歩でもしようと誘ってきたんです。俺がホテルに泊まったら、そんな朝早くにここまで来られませんから、茂さんが今日はここに泊まっていけって」玲はまた不機嫌そうな顔をした。奏汰は低い声で笑って言った。「俺はゲストルームに泊まらせてもらいますので、ご安心を。玲さんを困らせるようなことはありません。じゃ、こうしましょう。俺がここに泊まるのが嫌なら、今から一緒に泳ぎに行って、その後は玲さんだけホテルから出て家に帰ってください。俺はホテルで寝ることにします」少し考えてから玲は言った。「行きましょう」彼女も思いっきり暑い

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2126話

    凪が気に入っているのは姉のほうだということを碧が知らないとでも?しかし、姉は実は男ではない。正真正銘「姉」だ。凪の願いは初めから叶わない夢なのだ。この時、茂が急に立ち上がって娘に言った。「玲、碧、お前たちは奏汰さんのおもてなしをしっかりするんだぞ。私は母さんと一緒にドライブに行ってくる」「父さん、俺も一緒に行くよ」碧はお邪魔虫になりたくなかった。茂は碧を睨んで言った。「私は母さんとドライブをするのに、お前までくっついて来てどうするんだ?ドライブしたいなら勝手に行きなさい。私たちについてくるんじゃない」碧は言った。「……父さん、俺はあなたの息子だぞ。血が繋がってる息子なんだ」茂は鼻を鳴らした。「実の息子だからこうやって言葉で言ってるんじゃないか。もし他の人なら何も言わず直接横に蹴ってるぞ」碧は黙ってしまった。そして、彼は自分は絶対に両親にとってはおまけ的存在なのだと思った。それから十分もせず、茂と弥和の夫婦は出かけていき、碧も適当に理由をつけて外出した。玲は家族がみんな、彼女と奏汰を二人っきりにさせようとしているのを見て、碧のようにため息をついて、自分は本当にあの親の子供なのかと考えていた。こんなあっさりと娘を差し出して、娘が損しないか心配にならないのだろうか?彼女は奏汰を睨んでいた。奏汰は自分は無実だと言わんばかりにこう言った。「俺はご両親に賄賂など送ってないですからね。あのお二人が俺のことを気に入って、娘の婿として見ているだけです。それで俺たちが二人っきりになる機会を作ったんですよ」玲は淡々とした口調で言った。「結城さん、何度も言ったと思いますが、俺たちは合わないと思います。俺も結婚する気はないですから」「付き合ってもないのに、俺たちの気が合うかどうかなんてわからないでしょう?俺は玲さんの考えとは違って、とてもぴったりだと思ってるんですけど。みんな俺たち二人が一緒にいるのを見たらべた褒めするでしょう?結婚したくないって、誰かに嫁ぐのは嫌だということですか?それなら俺が婿養子になりましょうか?」奏汰は笑って言った。「それは簡単ですよ。うちは三人全員男で、両親も俺が婿養子に出るのなんか気にしないので。三人の兄弟の中で誰かがお嫁さんをもらえば、両親はもう満足ですからね」玲は顔を暗くさせた。この図々し

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2125話

    碧が凪のことを嫌うなんて、笑える話だ。そもそも凪のほうが碧のことは目に入らないらしい。しかし、凪の言葉も正しい。碧はたくさん曖昧な関係の女友達がいる。各業界にそんな女友達がいるから、彼がただの友達だと主張しても誰が信じるだろうか?そんな彼に彼女ができたら、彼女は受け入れられるだろうか?凪は言った。「さっきおっしゃった、弟さんが本気で好きになる女性に出会ったら一途だというのを私は信じます。だけど、このような男性の心を動かすのは難しいでしょうね。だって、彼はもう周りに多くの女性がいることになれているのに、たった一人だけを選ぶなんて嫌なはずです」凪は碧のことを何とも思っていないので、玲もこれ以上弟の話題を続けるのはやめておいた。どうして弟はこんな道楽坊ちゃんのように生きているのだろうか?これにより、玲は弟と凪をくっつけようという企みを諦めるしかなかった。二人は庭を何周かした。釣りに行った茂たちが帰ってくると、奏汰がその腕をふるいみんなに豪華な料理を準備した。もちろんバーベキューもだ。あまりバーベキューには興味がなかった凪でさえも、奏汰が作ったものに、はまってしまった。そしてひたすら奏汰の料理の腕を褒めていた。将来奏汰と結婚する相手は本当に恵まれている、ラッキーだと褒めちぎっていた。奏汰は玲を見つめ、にやにやと笑って言った。「玲さんはちょっと痩せているから、俺が美味しい物をたくさん食べさせてあげますよ」玲は冷ややかな表情で言った。「結城社長、別にあんたに食べさせてもらう必要なんてないですので」「そりゃあ、玲さんが人に食べさせてもらう必要なんてないことくらいわかっていますよ。俺はただ、毎日三食あなたのために食事を作ってあげたいだけです」「奏汰さん、俺、最近かなり痩せてしまったんですよ。俺のほうに美味しい物を作って太らせてくれませんか」碧はからかうように言った。奏汰は碧をちらりと睨んで言った。「それ以上食べたら、豚になるぞ」碧は言った。「……奏汰さんはえこひいきが好きだな。俺と兄は同じ母親から生まれてきて、どっちもイケメンなんですよ。兄にはとても優しくて、壊れもののように丁寧に扱うし、甘い言葉だってかけるじゃないですか。両親でもここまで兄に良くしてませんよ。それに俺に対してはいつも鬱陶しそうな顔をして、一体

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2124話

    「若葉はただ会社で中身のない肩書きだけでいいと、私とは後継者争いはしないと言いました。彼女と争うことは別に怖くありませんが、会社に利益をもたらせない人間を養うなんて絶対に嫌です。でも、最近母はちょっと若葉を会社に戻そうとしている気がします。まあ、そうなったとしても、別に恐れることはないんですが」玲は顔を凪のほうへ傾けた。凪も同じように玲を見つめ、暫くしてから笑って言った。「白山社長、まさかあなたが私の本性に気づいているとは思いませんでしたよ」「他の誰かがあなたをどう見ているかは重要ではないです。お母様があなたを理解し、凪さんの秘めた実力を見抜いていればそれでいい。あなたの一族は、当主となる人間が絶対的な権力を持ちます。だから、お母様があなたを理解できているなら、他の人なんか構う必要はないんです」凪の顔から笑みが消えた。「母ですか、母の気持ちはいつも若葉のほうへ傾いています」玲は何も言わなかった。若葉は当主の傍で育った。何も真実を知らなければ、黛家当主の娘に対する愛は、若葉のほうへ注がれやすい。若葉が偽物だとわかったとしても、当主も長年かけて育ててきた母と娘の情をそう簡単に捨てることはできない。そして凪に対して、彼女は完全に後継者として見ているだけで、母と娘の情などほぼゼロに近いのだ。もし、黛家にあの規則がなければ、凪は今の立場も得られていなかったはずだ。「白山社長、私のことはここまでにしましょう。私に関することなんてこれくらいで、みんなが噂している話が全てです。それよりもちょっと社長にお尋ねしてもいいですか」玲は穏やかな声で答えた。「どうぞ」「白山社長と結城社長は……その、お付き合いされることはあるのでしょうか?」玲は言った。「……それは、俺も答えられませんね。明日の事は誰だってわからないでしょう」凪は笑って言った。「私は本当に白山社長のことを尊敬しています。あなたも私のことをよく理解してくれている。もし、白山社長が結城社長の気持ちを拒み続けるのであれば、私にもチャンスをくれませんか」最初に凪が玲に接近した目的はわざと若葉を刺激して、怒らせたいと思っていたからだとするなら、今の凪は玲のことを本当に高く評価するようになっていた。それは主に玲が彼女のことをよく理解し、本性を見抜いているからだ。玲は彼女に対しても

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第2123話

    玲はため息をついた。「きっと、よその子供のほうがいいんでしょう」凪は笑って言った。「白山社長の気持ちは理解できます。うちの母もそうですから。いつも、どこどこの家のお嬢さんはどれだけ優秀だとか、私を馬鹿で役立たずな娘だと怒るんですよ。それにいつも若葉と比べてきます。若葉のほうが私よりもできる子だって。もし、黛家に代々から伝わる規則がなければ、彼女は私を後継者として育てることはしなかったでしょう。どのみち、いろいろ私の事が気に食わないんですよ」凪は気にしていない様子で話していたが、玲は彼女の心の苦痛を聞き取った。凪は黛家当主のそばで育ってはいないが、血の繋がる母と娘には違いない。母親からいつも傷つけられて、つらく感じないほうがおかしい。「凪さん、あなたはとても素晴らしい女性です。お母様がいくら何を言っても、きっと将来当主の座を勝ち取り、黛グループを率いていくことでしょう」玲は凪に慰めの言葉をかけた。それからまた続けた。「黛若葉は確かに当主に育てられた。小さい頃から後継者としての教育を受けてきましたが、実際、彼女の実力は高くありません。初めて彼女に会った時、弟にこっそり言ったことがあります。黛グループが彼女の手に渡ったら、会社はいずれ倒産するとね」きっと遺伝も関係しているのだろう。若葉は黛家の血を継いでいない。だから黛家の女性に伝わる優秀な遺伝子など持っていない。黛家当主は以前、生まれたばかりの娘が他の娘と差し替えられたことなど知らなかった。ずっと若葉のことを実の娘だと思い込んでいたのだ。だから、彼女を溺愛し、しっかりと育て、小さい頃から後継者になる教育を受けさせてきた。それでも、今の若葉は玲にとってはお粗末な不合格品だった。ただ、当主には一人しか娘がおらず、当時も娘が入れ替わっていたことなど知る由もなかった。黛家に伝わる規則では将来当主となるべきなのは若葉だった。当主は心の奥底では若葉の能力には満足していなかったが、それを表に出すことはなかった。若葉を順調に後継者にするため、当主は息子を会社に入れて重要なポジションに就かせ、娘の補助をさせるつもりでいた。若葉の能力は玲から見れば、会社を発展もなく今の状態のまま経営していくので精一杯だろう。しかし、最悪な状況は、それすらもできないことだ。一方、凪のほうは生まれ持ってビ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第703話

    食事の後。理仁は食器類を片付け、唯花はテーブルを綺麗に拭いて椅子を並べてからダイニングルームから出て来て義母の前に座った。彼女は時間を確認した後、義母に言った。「お義母さん、こんな時間ですし、車を駐車場にとめて、今夜はここに泊まったらどうですか?」「いいえ、私はもう少ししたら帰るわ。私が家にいないと夫が落ち着かないでしょうからね」一番上の息子が会社を引き継いだ後、夫は退職して、夫婦二人は毎日常に一緒に過ごしていた。彼女が家にいないと、夫は確かに慣れないのだ。唯花はこの義父母の関係が羨ましく思った。若い夫婦が年を取るまでずっと一緒にいて、人生が終わるまで自分の傍にいるのは

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第652話

    理紗はとても興味がある様子で唯花に尋ねた。唯花は振り返って来た方向を確認してから言った。「お姉ちゃんがついて来てなくてよかったです。だけど、今はもう大丈夫、お姉ちゃんは佐々木俊介とは離婚したし。最初、あのクズ男がお姉ちゃんとよく喧嘩していて、それは私のせいだってわかっていたので、スピード婚することにしたんです」彼女はスピード結婚した理由を理紗に教えた。理紗は頷いた。「そういうわけだったのね。あなたが旦那さんのおばあさんを助けたことで気に入られて、それも恩返しをしたいがために、あなた達を結婚させたと」彼女は結城家のおばあさんに会う機会などほとんどなかった。しかし、夫の玲凰からおば

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第596話

    その時、聞いていて我慢できなくなった人が英子に反論してきた。「そうだ、そうだ。自分だって女のくせに、あんなふうに内海さんに言うなんて。内海さんがやったことは正しいぞ。内海さん、私たちはあなたの味方です!」「こんな最低な義姉がいたなんてね。元旦那が浮気したから離婚したのは言うまでもないけど、もし浮気してなくたって、さっさと離婚したほうがいいわ、こんな最低な人たちとはね。遠く離れて関わらないほうがいいに決まってる」野次馬たちはそれぞれ英子を責め始めた。そのせいで英子は怒りを溜め顔を真っ赤にさせ、また血の気を引かせた。唯月が彼女に恥をかかせたと思っていた。そして彼女は突然、力いっ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第623話

    明凛は車をずっと飛ばし、琉生を金城家の邸宅へと送った。車を止めると、彼女はまず唯花にメッセージを送り、あと30分くらいしたら戻るから店で待っているように伝えた。唯花はそれに了解したというスタンプを送り返した。明凛のおばである金城伊織(かねしろ いおり)はちょうど出かけようとしていた。彼女は毎晩付き合いがあるのだ。ポーカーをしに行ったり、パーティーに参加したり、夫に付き合って接待に行ったりだ。その時、息子が車を家の前に止め、車から姪が降りてきたのを見て彼女は少し驚き、すぐに笑顔になって言った。「明凛、どうして琉生と一緒にいるの?」彼女はまた車から降りてきたばかりの息子に向かっ

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status